(試)xxxHOLiC 1話

アニメ

人には不幸を願う自由もある

xxxHOLiC

Episode1ヒツゼン

絵コンテ:水島努 演出:水島努 脚本:横手美智子

<あらすじ>
アヤカシが見え、憑かれやすい体質の高校生、四月一日君尋。彼は日々、アヤカシに追いかけ回され悩んでいた。ついにはアヤカシに覆いかぶせられ身動きが取れなくなる。そんな時、偶然近くの塀に手が触れると、なぜかアヤカシは消えてなくなった。不思議に思って塀の中を覗いてみると、足が勝手に動き出し吸い込まれるように屋敷の中へ。そこにいたのは屋敷の主人、壱原侑子。そして、「ここは願いが叶うミセ」だという。彼女はアヤカシが見えなくなるように彼の願いを叶えるというが、その対価としてミセで働くよう告げるのだった。

※この記事はアニメ作品について扱っています

概要

今回のテーマ「出逢い」

第1話「ヒツゼン」は、「出逢い」についてのお話。

対価さえ払えばどんな願いも叶える店の主人「壱原侑子」とゲストの悩み相談を通して話が進んでいき、各話完結としてゲストが物語の顛末にたどり着く。

主人公「四月一日わたぬき」はゲストの問題に首突っ込みながら、結末を傍観する。

これが『xxxHOLiC』の基本構成。

ただし、
・作品通してのテーマのため、「必然」・「出逢い」・「縁」については別で記載する。
・「侑子」と「四月一日」の出逢いのため、四月一日自身の悩み相談になっている。

そのため、ゲストの女子高生「彩花」の方が間接的な登場になっている。

「ヒツゼン」の対価

作品全体のテーマ「対価」について。

四月一日→侑子
願い:???
対価:懐中時計
働き:???
結果:???

別作品「ツバサ・クロニクル」の内容に関わる部分らしく、『xxxHOLiC』だけでは読み解けません。

◉侑子→四月一日
願い:四月一日の名前を知りたい
結果:四月一日が名前を教える
対価:侑子が名前を教える

他のパターンとは異なり、素性を聞きたい侑子がうまく誘導したことで、対価を払う前に結果を得てしまう。そのため、後から自分も名乗ることでバランスをとっている。

〜メインの願い〜

●四月一日→侑子
願い:アヤカシがなくなればいい
対価:屋敷での労働
働き:買い出し(外出)
結果:アヤカシが「彩花」に移る

不幸を望む女子高生

願いを受理した侑子さんは四月一日に買い出しを命じます。

その買い出しの途中、道端で女子高生の集団と出逢う。

中心にいる少し浮かない表情の「彩花」は「見えなくなればいいのに、ほんとに困っているの」と、何かに毎日悩まされていることを友人に打ち明ける。

その状況が自分と酷似していた四月一日は彼女たちの後をついていく。

友人たちは「今もいるの?」、「見えるようになったのはいつから?」、「どうして?」など興味津々。

さらには「すごいじゃない、私なんて鈍感だもん」と。

しかし、アヤカシの見える四月一日には何も見えず、彩花にアヤカシは憑いていません。

「大丈夫だから、君には何の悪いものも取り憑いていないから」と声をかけますが、「私の苦しみは、あなたみたいな普通の人にはわからないと思います」、しまいには「幸せですね、見えない人は」とまで言われる始末。

ここで、四月一日の願いが叶います。

彼女と肩がぶつかった瞬間、四月一日に憑いていたアヤカシが彩花に乗り移るのです。

そうして、四月一日の願いだけでなく、彩花の願いまで叶うのでした。

てっきり、モコナがアヤカシを寄せ付けないお守りだと考えていた四月一日にとって、他人に乗り移らせる方法で叶えるという結末に納得がいかず、「いなくなればいいと思ったけど、自分に憑いていたものを誰かに押し付けるようなこと……」と侑子さんに訴えます。

しかし、「アヤカシは誰のものでもなく、ただアレを望む者がいて望まれる者がいた、ただそれだけの話よ」と諭されます。

幼少よりアヤカシで苦労してきた四月一日にとってアヤカシは不幸そのもの。

そんなアヤカシを「望む」ことが全く理解できません。

ですが、「人は何だって願うことができるのよ。幸せも、不幸せも。決して良くない結末であっても、それを願う自由はある。そしてその自由は誰にも邪魔されない」

そう告げられるのでした。

考察

「ヒツゼン」のキーワード

1.「世に不思議は多けれど、どれほど奇天烈、奇々怪々な出来事も、人がいなければ、人が見なければ、人が関わらなければ、ただの現象。過ぎて行くだけの事柄。人こそ、この世で最も摩訶不思議なモノ……」

1話でのみオープニング前にこのセリフが挿入される。
「アヤカシ」と云うオカルト的な存在が多数登場するが、『xxxHOLiC』において「アヤカシ」は超常現象ではなく、あくまで人の心に起因するものであると、この作品の立場を示している一言。

2.「塀は結界だから」

侑子さんの住まうミセ(屋敷)は、この世とあの世の狭間のような場所。
ここには悩みを抱えた人間(アヤカシと縁を持った人間)しか入れない。
鳥居のように出入り口を一箇所に制限することで、人間とそうではないものを区別し部外者を入れない仕組みになっている。
そのため、四月一日が言うところの「偶然迷い込む」はありえない。

3.「名を知られることは相手に魂の端を掴まれるようなもの」

これは実名敬避俗(実名敬避する習俗)と云う考え方に基づいている。
ある人物の本名はその人物の霊的な人格と強く結びついたものであり、親や主君などのみが呼称を許され、それ以外の人間が名で呼称することは無礼であると考えられた。
これは、その名を口にするとその霊的人格を支配することができると考えられたことによる。

穂積陳重・本居宣長


※これは言霊信仰と云う考え方。昔は本名を知られ発音されると言葉の力で相手に支配されてしまうと信じられていました。それほど言葉の力は強いのです。今でも、結婚式で別れを連想させる言葉は避ける「忌み言葉」として、この考え方は残っています。

このセリフに関しては後の話で具体例が出てきます。

4.「この世に偶然なんてないわ。あるのは必然だけ」

下記 偶然? 決定論?

5.「与えられたものにはすべからくそれに見合うだけの代償、対価が必要なのよ。与えすぎてもいけない。奪いすぎてもいけない。過不足なく対等に、均等に。でないと傷がつく」、「現世の躯に星世の運に天世の魂に」

下記 対価 物の価値

6.「タマシイには大切なものっていう意味もあるのよ」

辞書を引くと「刀は武士の魂」など、確かに「大切なもの」の意味もある。
願いを叶えるというのは、自分の大切なものを差し出すくらいの覚悟が必要と云うこと。

7. 「命を奪うなんてそんなリスクの高い重いことしないわ。割に合わないもの」

このセリフに関しては後の話で出てくる。

 

8.「人は何だって願うことができるのよ。幸せも不幸せも。決してよくない結末であってもそれを願う自由はあるの。そしてその自由は誰にも邪魔されない」

下記

9.「どんな小さな出逢いでも出来事でも影響は必ず及ぶもの。どれほど短い時間でも結ばれたえにしは消えない」

えにしとは、人間の意思を超えた力によって起こる巡り合わせのこと。
人が変わる時には必ずえにし(出逢い)がある。

出逢いは偶然ではなく必然なのか

内容の前に「出会い」と「出逢い」について補足。

「出会い」は広義的な人と人が会うことを指しますが「出逢い」は人と人が会って恋に発展したり、変化が起ころうとする場合に用いられる。
つまり『xxxHOLiC』における「であい」はキーワード9から推測するに「出逢い」であると考えられる。

 

1話のメインテーマであり、作品全体のテーマとなっている「必然」について。

結論は「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ」

 

たとえば、同じ学校に入学しで同じクラスになって「出会う」のは偶然です。

ですが、仲良くなるか否かは自分の意思で選択するので「出逢う」のは必然と言えます。

しかも、一方通行ではいけません。相手の意思もあなたと同じ選択が必要になるからです。

もし、全ての事象を「偶然」で片付けてしまうと、あなたは意思を放棄したことになり、たちまち周りに振り回される人生になります。

「出逢いが必然」と云うのは、自分の意思で選ぶことの重要性を説いています。

 

そして「出逢いが必然」だとするなら、「出会いも必然」にもなりえます。

学校を選びも意思によって選択肢を変えられますし、そもそも「出逢う」には自ら人のいる場所へ赴かなくては発生しません。ひきこもりに友人がいないのもまた必然です。

不幸を願うことも自由?

1話のもう一つのテーマ「不幸を願う自由」について。

結論は「人は何だって願うことができるのよ。幸せも不幸せも。決してよくない結末であってもそれを願う自由はあるわ。そしてその自由は誰にも邪魔されない」です。

きっと、多くの人が幸せになりたい、もしくはなって欲しいと願います。

しかし、不幸を願う人もいます。それを自己憐憫れんびんと言うそうです。

今回登場した彩花はまさに自己憐憫の状態です。「悲劇のヒロイン症候群」といわれたりもします。

集団の中心でいるために、彩花は不幸を演じていました。その結果、言霊の強さによって本当の不幸を自ら引き寄せてしまい、「不幸になりたい」と云う願いが叶ってしまったのです。

幼少期からアヤカシに苦しめられた四月一日と同じように、今後彼女も身を持って苦しさを味わうことでしょう。

けれど、彼女はそれほど不幸に感じないかもしれないし、人間自分の身で体験してみなければわからないことも多いです。自分が先に体験していて、同じ目に遭わないようにといくら説得しても、誰かの願いを邪魔することはできないもの。

他人ができることなんて、たかが知れているってことです。

 

アニメの中の創作だと思うかもしれませんが、現実でも起こりえます。

たとえば、金にも女性にもだらしない明らかなダメ男を好きだとします。

その先はないに等しくて、幸せになれない確率は高いでしょう。

だけれど、その不幸を願う自由はあります。結末は誰にもわかりません。だから、人はどんな願いもできます。

傷つき、失敗を経験することで、その先の幸せに繋がるかもしれません。

さらに言うなら、自分の思う不幸が相手にとっても不幸とは限りません。あなたにはダメ男に思えても、友人にとっては最高のパートナーの可能性だってあります。

 

大切だからこそ心配して、良かれと思ってアドバイスしていても、価値観を押し付けているのに変わりありません。

もし、大切に思って何かしてあげたいのなら「そんな男やめなよ」ではなくて「見守る」べきです。

友人の本当のSOSを見逃さないためにも。

 

いつからか、誰もが幸せにならないといけない、ような雰囲気が漂うようになりました。だけれど、幸せも不幸せも、ましてや何も願わないことも自由でいい。

そもそも、自由に不幸も選べないのに、みんなが幸せになれるなんて、おかしな話ですしね。

おまけ「xxxHOLiC」の世界観

侑子の衣装

着物、洋服、小物に至るまで、細かく描かれている。
話ごとに変化する侑子さんの服装に注目。

煙管

侑子がふかしているのは「羅宇煙管」。
他に「延べ煙管」や「刀豆形煙管」もある。
現在販売されている煙管用の刻みタバコは「小粋こいき」と「宝船たからぶね」2種類のみ。

 ▼刻みタバコの販売店情報
 関連項目:マイナータバコ情報@Wiki

侑子さんがこよなく愛し、服に大きくあしらわれている蝶柄。
蝶は霊魂や魂の象徴。
古来より魂は人の体から離れると空を飛んであの世へ帰っていくと考えられていた。
空を飛ぶ魂や鳥や昆虫など空を飛ぶ生き物に姿を変える、空を飛ぶ生き物が魂を運ぶと考えられていた。
蝶も魂と関わりのある生き物。

豚鍋

白菜、豚鍋、柚子胡椒〜♪。
豚バラと白菜のミルフィーユ鍋って実は中尾鍋(俳優・中尾彬と女優・池波志乃夫妻が考案)がルーツなんだとか。

 ▼中尾鍋のレシピ
 関連項目:中尾鍋-Wikipedia

水盤

劇中「四月一日」の素性を読み解くために使われます。
「水盤占い」と言われる人為的に貯めた水の流れを使った占い方法。

タリーズコーヒー

劇中「彩花」と遭遇するシーンで出てきます。
アメリカのシアトルを本拠とするコーヒーチェーン店。

 ▼TULLY’S COFFEE
 関連項目:公式HP

●ジグソーパズル

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