「ラム」ってどんなお酒?
04/03/2021
ラム酒とは
「ラム」とは、サトウキビの廃糖蜜または絞り汁が原料の蒸留酒。
アルコール度数のレンジは40°〜75°。
ジン、ウォッカ、テキーラとともに4大スピリッツに含まれ、ロックでそのまま飲むのはもちろん、カクテルとしても多く使われています。
発祥は17世紀のカリブ海の島。
飲んだ経験はなくとも海賊のイメージはあるのではないでしょうか。
日本では、仔羊(ラム)と勘違いされ、製菓用の洋酒という印象が強く、居酒屋のメニューにはありません。
バーですら、マスターが好きでなければカクテル用に数本ある置いてあるだけ。
そんな日本ではあまり飲まれないお酒「ラム」を紹介します。
今回参考にした本がこちらです。
日本ラム協会から出ている、いわば「ラム」の教科書。
普段お目にかかれないラムが多数掲載されており、世界中のラムをわかりやすい基準でジャンル別に紹介しています。
サトウキビが原料のため、口当たりは甘くまろやかであり、アルコール度数の割には飲みやすく、スイーツに合わせやすいお酒です。
大ヒット映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で海賊たちが好んで飲んでいたのが印象的で、映画公開の2007年にはイギリスで「ラム」が飛ぶように売れたんだとか。
世界的にはクラフトラムや、ボトラーズなどもじわじわ盛り上がってきています。
ラムの種類
幅広い味わいのある「ラム」ですので、おおまかな分類による違いから説明していきます。
原材料・製法
1 トラディショナル
・砂糖製造時に取り除く「糖蜜」が原料
・ラムは元々、砂糖の副産物だった
・全世界のラムの9割はこのタイプ
サトウキビジュースのうち、結晶化した部分は砂糖に、結晶化しない部分は糖蜜になる。糖蜜を発酵・蒸留により作られるタイプ。糖蜜は冷蔵保存可能なので、年間を通して製造できる製法。
2 アグリコール
・サトウキビジュース100%が原料
・19世紀にフランス領植民地で確立した製法
・ラムの生産量のうち、1割ほどの少数派
砂糖の製造との関わりはなく、サトウキビジュースをそのまま発酵・蒸留により作られるタイプ。サトウキビジュースは作り置きできないため、サトウキビの収穫時期(乾季)しか製造できない製法。
(コルコル、ラオディ、トロワ リヴィエールなど)
3 ハイテストモラセス
・サトウキビジュース100%を加熱し、シロップ化した「ハイテストモラセス」が原料
・最も新しい製法
こちらも砂糖の製造との関わりはなく、1と2のハイブリットな製法。
(ロン・サカパ、ディクタドール、イエラムサンタマリアなど)
熟成期間・熟成方法
1 ホワイトラム
・基本的に樽熟成させない無色透明のラム
・全てのタイプのラムで最も生産量が多い
クセが少なく、カクテルによく使われる。サトウキビ自体の味わいを楽しめるタイプ。
2 ゴールドラム
・基本的に内側を焦がしていない大樽またはバーボン樽で2ヶ月〜3年未満の熟成をしたラム
ウィスキーのような琥珀色で、ブランドの個性が色濃く表れる。果物やハーブで香りをつけたフレーバーラムが多いのもこのタイプ。
3 ブラックラム
・基本的にバーボン樽で3年以上熟成したラム
・過去はウィスキー、ブランデーの代用品
・熟成したラムの9割は輸出用で生産者はあまり飲まない
樽から滲み出た木の香りがよく、味に深みが増すので、ストレートがおすすめ。濃い褐色で香りが特に強いタイプはジャマイカ産に多くみられる。
4 スパイスドラム
・ハーブやフルーツ、香辛料を砂糖と共に漬け込むタイプ
元々は荒々しさ残るホワイトラムを飲みやすくしたり、薬効成分を持たせるための工夫だった。個性が強く、カクテルやお菓子の風味付けに使用される。
過去の宗主国ごとによる特徴
当初粗悪だったラムに、それぞれの宗主国が自国の蒸留技術を持ち込み品質向上した経緯があり、各宗主国別に本国の酒の特徴を備えている。
1🇬🇧イギリス系(RUM)
スコッチの技術を踏襲し、ウィスキー好きに好まれるどっしりとした濃い味わいのラムが多い。特にジャマイカ、ガイアナにおいてはブレンテッドウイスキーの技術を踏襲しており、前項の影響が顕著に現れている。
🇯🇲ジャマイカ、🇬🇾ガイアナ、🇧🇧バルバドス、🇻🇮アメリカ領ヴァージン諸島、🇧🇲イギリス領バミューダ諸島、🇦🇬アンティグア・バーブーダ、🇹🇹トリニダード・トバゴ、🇮🇳インド、🇦🇺オーストラリアetc…
2 🇫🇷フランス系(RHUM)
コニャック(ブランデー)の技術を踏襲し、香りが良くブランデー好きに好まれるラムが多い。アグリコールラムのほとんどがフランス系で製造されている(少数ではあるがドミニカ共和国や日本でも製造されている)。
フランス海外県(🇬🇵グアドループ県、🇲🇶マルティニーク県、🇬🇫ギアナ、🇷🇪レユニオン)、🇭🇹ハイチ、🇲🇺モーリシャス、🇲🇬マダガスカル、🇱🇦ラオス、etc…
3 🇪🇸スペイン系(RON)
同じスペイン系でも島ものと大陸もので特徴が異なる。島ものは度数が低めで飲みやすく、ストレート向きなドライ系。大陸ものはシェリー/シェリーブランデーの技術を踏襲し、甘みが強く、しっかりとした味わいが特徴。葉巻との相性もいい。
島系(🇨🇺キューバ、🇩🇴ドミニカ共和国、🇵🇷プエルト・リコetc…)
大陸系(🇲🇽メキシコ 、🇬🇹グアテマラ、🇳🇮ニカラグア、🇨🇷コスタリカ、🇵🇦パナマ、🇨🇴コロンビア、🇻🇪ベネズエラ、🇵🇪ペルーetc…)
おすすめ銘柄
【ホワイトラム】
トロワ リヴィエール ブラン
(産)🇲🇶マルティニーク県 (製)アグリコール (宗)仏
・ホワイトでおすすめはドライ系。アグリコールは甘口ラムより癖が強くサトウキビの青さが残る味わい。その中でもトロワ リヴィエールは飲みやすく価格もそこまで高くない。ストレートでも、カクテルでも。
【ゴールドラム】
・調査中
【ダークラム】
ロン サカパ センテナリオXO
(産)🇬🇹グアテマラ (製)ハイテストモラセス (宗)西
・ラムと言ったらロン・サカパ。初めてのラムはこの一本から。ダーク系の中でもクセがなく、甘口で飲みやすい、王道のラム。おすすめはストレート。
【スパイスドラム】
キャプテンモルガン プライベートストック
(産)🇻🇮アメリカ領バージン諸島(製)トラディショナル(宗)英
・キャプテンモルガン スパイストラムの上位モデル。通常品より樽やハーブの香りが出ていて初めて飲むには少しクセがある印象。ラムにハマったら試してみて欲しい1本です。おすすめはロックかストレート。
セーラージェリー
(産)🇻🇮アメリカ領バージン諸島(製)トラディショナル(宗)英
・ラベルの裏面にモチーフが描かれており5〜6種類あるそう。フルーツっぽい香りがしますが甘さは控えめ。おすすめはラムパンチ。
ダークマター
(産)🏴スコットランド(製)不明
・スコッチウィスキーの国が作った問題作。強烈な生姜の香りがクセになる。サトウキビの生育に適さないスコットランドで作られた比較的新しいラム。おすすめはストレートか、モヒートなどの王道カクテルに合わせる。
まとめ
少しは興味を持っていただけたでしょうか。
「ラム」の条件はサトウキビを原料としているのと、蒸留酒であるの二つだけ。ある意味、「自由なお酒」と言えます。そのため、同じ「ラム」でも、色や風味も異なる。世界各国あらゆる場所で製造されており、全世界で4万銘柄以上あるとも言われています。
おすすめの飲み方はストレートですが、ソーダ割りやカクテルでも十分楽しめます。価格帯も他のお酒に比べるとリーズナブルなので、気軽に手に取ってみてください。
この機会にあなただけの1本、あなただけの1杯を探してみませんか。